Last Update : 2001年10月14日 01:03

盗聴法(通信傍受法)に反対しよう!

 

1999年8月、通信傍受法が衆議院本会議を通過し、可決されました。遂に2000年8月に施行されてしまいました。

この法律には、問題点や陰謀の疑惑が多すぎで、悪法と言わざるを得ません。この法律が国民生活を蝕み、『安全』と引き換えにプライバシーが失われ『管理統制下型社会の構築』につながるこの法律を、みんなで反対しよう!

まず、この法律はどんな法律かというと、ポイントとして以下のように、少々マジメにまとめてみました。


警察などの権力機構が、有線通信設備の盗聴を行うことを制度化する。

『一部の重大事件に関わる範囲内のみに限定されているので、一般の通信には関係ない』と思われがちです。

確かに『銃器・薬物・密入国・組織的な殺人』が盗聴の対象ですが、ここで組織とは、複数人グループであると定義されています。もちろん2人でも複数人と見なし得ます。単独の犯行であれば、1人で電話やe-mailで犯罪計画の打ち合わせなどはしませんから、全ての殺人事件などに関連する通信が対象になるように、法制化されています。しかし後述しますが、重大事件以外も盗聴され、データが保管される可能性もあり、全ての盗聴行為が正当化され、堂々と当局が予算を請求することを可能にした法律と言えます。

通信が電話であれば、それ程大げさに取り上げることも無かろうという意見すらありますが、実際には、重大事件かどうかを判別する為には、無関係の通信を盗聴する必要があることは構造上必至です。

 

電話などの通信にとどまらず、e-mail/インターネットなどのデジタル通信も当然含まれる

これは、無関係な通信傍受の範囲が、アナログの盗聴に比べてほぼ無制限に広がる可能性を秘めていることを示しています。

立会人がいるから公平な慎重な盗聴が行われるだろうという期待をしがちですが、インターネットのe-mailやホームページなどを覗き見るときなどは、一度に大量の情報を蓄積することが可能で、当局の盗聴者の重大事件関連の特定情報のみを盗聴していることを、立会人が判断することは技術上非常に困難です。技術的には盗聴プログラムやシステム次第でどうにでもなってしまいます。実際に立会人は殆ど何も出来ませんし、通信を停止させるだけの権限がありません。そもそも『重大事件の関連情報』自体があいまいな表現で、どこまで盗聴が許されるのかは、盗聴者本人の胸一つということになります。

※冗談で『xxは殺してやりたいよな!』なんてe-mailを書こうものなら、重大事件関連ということになり、盗聴対象となり得ます。

デジタル通信が本格化している世界では、このような情報が当局に蓄えられ、後になってから検索することが可能で、盗聴した内容を非常に手軽に効率良く管理することが出来ます。警察庁では、盗聴データの記録媒体にDATやDVDを大量に導入して保管することが判明しており、はじめからインターネットをターゲットにしていることが判ります。

一般的なe-mailの場合には、プロバイダのメールサーバのハードディスクに一括して蓄えられている為、メールサーバの中に一つでも情報/人物があれば、そのサーバ全体の内容を丸ごと押収することが可能です(削除した形跡なども調べる必要もあるため、内容のみのコピーはせずハードディスク全体を解析する必要があるらしい)。長い間に盗聴対象と無縁な広範囲なデータが権力機構に保存され、監視下に置かれることになります。

同法施行後は、e-mailやホームページで、重大犯罪と取られる恐れがある表現を含まないように気を使う必要があるだけでなく、常に誰かに見られてしまうかもしれない(後に問題にならないようにする配慮など)という緊張感が付きまとい、表現の自由・通信の秘密が、根本から覆されるということになります。

 

憲法違反の可能性がある。

日本国憲法 第二十一条【集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密】

  1. 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
  2. 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

とあり、第2項に明らかに違反していると思われます。

法務省は、通信の秘密は『公共の福祉』の方が優先されるという見解のようですが、官僚・権力者の全体主義・管理主義志向が伺えます。

今時点で考えられる問題は,当局の今後の対応についてです。それは,組織的犯罪が通信傍受によって回避されたというアピールを大々的に行ったり,或いは同時にもっと積極的に通信傍受を行っていれば未然に防げたという主張をすることによって,なし崩し的に法律を段階的に改正し,結果的に当局がより強力な権限を獲得してしまうことです。

これはキケンなことです。時間をかけて既成事実が徐々に積み重ねられ,存在意義が出て来た/現実的に無視できない存在になった時,それは,現憲法下における自衛隊の存在に通ずる問題が出てくるからです。

ここで自衛隊の問題と共通するのは『憲法解釈の問題』という議論が存在することです。解釈の議論がハッキリと『大勢 vs 少数』であれば『解釈の問題』にはならないかもしれません。しかし忘れてならないのは,日本の憲法は3分の2の賛成が得られなければ改正できないものなので,少数派が3分の1以上であれば,解釈の議論にすることはナンセンスであるということです。国民の3分の2の賛同を得られないような憲法解釈に基づいて立法してはならないという意味です。通信傍受そのものが必要というならば,現憲法の必要な部分を明確に改正してから行うべきです。法治国家である日本では,憲法と言う定められたルールは守るべきで,拡大解釈によっての実績は絶対にあってはならないことです。法治国家で憲法が有名無実化するということは,国民全体のルールが屁理屈などによって根底から成立しなくなるわけで,これを避けなければならないからです。

ここでは直接関係ありませんが、有害情報(過剰な性・暴力表現など)を含む映画や番組に対して、当局が積極的に介入/検査するような議論も最近では見かけます。これも、十分に議論を行わななければ、憲法で保障されている国民の権利を損ないかねません。

 

本来の盗聴対象である組織犯罪集団に対しての効果は懐疑的である。

通信傍受法は、組織犯罪対策3法の1つで、本来の盗聴の対象者は、凶悪な密輸などの犯罪集団です。しかし、このような法律の存在が明らかになっているご時世に、犯罪者は暗号化せずに平文でe-mailなどのやりとりを行うでしょうか。暗号を駆使して通信するはずです。

しかも暗号も常に研究が進んでおり、日に日に強力になっています。暗号を破ることは容易では無くなってきています。

日本でも暗号に規制がかかるのは時間の問題と言われています。しかし、暗号であるかどうかわからないように(画像などの他のデータのようにしてカモフラージュして)送信することも現実的に行われているようです。このような暗号化している通信で膨大なデータから暗号部分を見つけ出すことは、技術的に非常に困難であるといわれています。当局はこのような暗号通信に対して、全く無力です。

このようにこの盗聴法が巧妙な集団的犯罪組織に対して殆ど無力であることが既に判っています。結局、末端の犯罪者や一般市民がとりあえずのターゲットとなり、監視するだけの法律になりかねません。

 

当局を全面的に信頼できない現状。

あまりこのような(現状をあおるような)ことを書きたくありませんが、神奈川県警をはじめとした一連の事件で、昨今の警察内部の腐敗・構造的疲労が問題になるのも残念ながら事実です。

盗聴法の議論が国民の間で充分に行われずに議会を通過してしまったこと自体もよくないことですが、それ以前にまず、当局の構造的な体質を根本的に改善し、成果が目に見えて現れない限り、盗聴法が悪用される不安を払拭できないのです。

 

国際盗聴組織エシュロンの一部として機能するという可能性。

米・英・加・豪の英語圏の国々が協力し、国を挙げての国際盗聴組織を膨大な金をかけて構築していた話は、最近では有名になりました。電話・衛星通信・インターネットなど、ありとあらゆる通信が自動的に録音/記録できる非常に強力な機器で監視されていたのです。この組織の一部として日本の三沢基地付近にある建物が実はエシュロン基地であったとする報道がありました。戦争の一端を積極的に担ぐことになります。


軽く記述しただけでも、これだけの問題点をはらんでいます。

安全な社会に住むということを究極的に突き詰めてしまうと、非常に不自由な生活を強いられる結果になることを忘れてはいけません。安全と自由はトレードオフの関係にあるのです。安全を安易に優先した結果、国民の権利はいつの間にか縮小し、当局の利権が増大、結果として管理されるということを知っていなければなりません。一旦失ってしまった権利は、並大抵の努力では取り戻すことはできないのです。

この安全と自由のバランスは常に考え、発言し、議論し,監視し、行動するという『不断の努力』は、まさに国民の義務です。

憲法の解釈も,なし崩し的に行い既成事実が積み重ねられること,3分の2以上の賛同が得られないような微妙な解釈に基づいて立法してしまうことそれ自体が問題なのです。憲法を有名無実化するような前例をこれ以上作ってはならないと考えるからです。

これらのことにより、当サイトでは、通信傍受法(盗聴法)に反対する立場をとります。

当HPは盗聴法に反対します。
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参考文献 & リンク集

盗聴法関連データベース
http://www.jca.ax.apc.org/~toshi/cen/database.html

盗聴法について考える
http://www.campus.ne.jp/~ishigami/PROMOTE/ETERNA/index.html

『プライバシーの危機に瀕する日本
http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/2531.html

ネットワーク反監視プロジェクト
http://www.jca.apc.org/privacy/